ミカミ ポーラのuranaisu

ミカミポーラが福岡は城南区のSalon de uranaisuで書いています。サロンいうても美容院じゃなくて占いするところよ。

占星術のデマ:月は妻でも母でもないし、私生活の象徴でもない

講座テキスト新しいのを作ろうとしてるんだけど、いまとなってはデマを信じていたよなあと思うところがたくさんある。一部ご紹介します。

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惑星の区分には女性天体、男性天体と呼ばれるものがあります。同様に12サインを女性サイン、男性サインとわける考え方もあります。女性天体は月と金星、男性天体は太陽と火星です。また女性サインは水と地が、男性サインは火と風があてられています。

 

この女性、男性という区分はさまざまな矛盾を抱えており、通説をうのみにすると現実とかけ離れた結果を引き起こすので注意が必要です。

 

たとえば月はもっとも身近な星でありながらさまざまな誤解を受けている代表格です。

 

月は感情と記憶、そして肉体の象徴です。一方で占星術を学び始めると「男性の月はその人の理想の妻をあらわし、金星は恋人をあらわす」といった話を誰もが聞くことになります。また月は母親の象徴ともされています。はたしてこれらの説には信頼に足る根拠があるのでしょうか。

 

月の女神アルテミスが処女神であることは有名です。太陽の神アポロンの姉であったアルテミスは半神半馬のケイローンを育てるなど保護的、養育的な逸話も残しています。しかしアルテミスが授けたのは主に狩猟と戦闘の知恵であり、情操教育担当は音楽と医療の術を授けた父親代わりのアポロンでした。ケイローンがアルテミスの薫陶により数々の英雄を育てたことからアルテミスの教育の質の高さがうかがえます。しかしアルテミスはけして聖母マリア観音菩薩のような懐の深さで知られた女性ではありませんでした。

 

月が母親の象徴とされるようになったのは家庭をあらわす4ハウスが父親ではなく母親のハウスと誤解されるようになった影響もあります。

 

近代に入って古典的な知識が一時的に失われた時代に1ハウスを土星とする伝統的なハウスルーラーが忘れられ、12サインと12ハウスを混同する占星術家があらわれました。そして4番目のサインである蟹座のルーラーが月であったため、家庭と月を結び付け、月は家庭にいる女性、つまり妻であり母であると考える傾向がますます広まっていきました。これは家の女と書いて嫁と読む日本ではとても自然な発想だったことでしょう。

(実際には4ハウスのルーラーは太陽で父親、家長をあらわします。)

 

そしてここから月は私生活をあらわすという誤解が生まれます。MCが社会生活、ICを私生活と考えた場合、IC担当と誤解された蟹座のルーラーである月は私生活をつかさどる星と考えられたわけです。

 

経済活動に参加することが社会参画だと思われている文化では女には社会生活はないものとされてきました。家事育児、子育て、看護介護などはみな私生活に該当すると考えられてきたのです。

(家庭内労働は6ハウスの管轄で、6ハウスのルーラーは水星です。)

 

こうして月は家にいる女性の象徴、経済活動から疎外された「私生活」の象徴とされてきました。こうした解釈はすでに蔓延している女性の在り方を強化するという意味で多くの人にとって身近で腑に落ちる解釈だったことでしょう。

 

しかしこうした解釈には少なくとも古典的な意味での占星術的根拠はありません。感情や記憶、肉体を伴わない社会生活はありません。またいうまでもなく男性にも感情があり、思い出があり、何より肉体があります。

 

実際にチャートを読んでいけばわかりますが、生まれたときに月があった位置に強い影響があれば身体に不調がおこります。そこに性差はありません。月を中心に人生の森羅万象を占う宿曜占星術は人の肉体や感情がどのように人生に影響するかを読み解いているものですが、これらに影響されるのは女性だけではありません。

 

男性、女性という区分に問題が起こりがちな原因のひとつは占星術が長年浮世離れした男性に、つまり家事育児をする必要がなく、社会的に重要な決定は男性が行うもの、感情的であることや着飾ることは女性の専売特許とされる文化で生きた男性たちに独占されていたことにあります。

 

口頭で伝わり道具もいらない手相などと違って、占星術は近代に入るまで途方もないお金と時間がかかる学問でした。天文暦の入手、読み書きができること、ホロスコープを作成するための計算ができること、それらを書くための紙やインクを買うお金があること、これらを教えてくれる教師に払う授業料も必要です。

 

そのため学者になれる社会的立場と経済的な支援者を持つ限られたひと以外は近代に入るまで占星術を学ぶことができず、占星術家は家柄に恵まれた男性によって独占されてきました。女性が本を読むことさえゆるされなかった時代なのですから無理もありません。そして多くの男性占星術家にとって女性は理解できない他者としてミステリアスな存在でした。

 

しかし現代に生きる私たちは(パーティートーク用のちょっとした話のネタとしてではなく、占星術を学んで実際に的中率を上げたいと思うのならば)原点に回帰しこうした偏見を慎重にとりのぞく必要があります。

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じゃあ男性天体、女性天体って性別ごとに見ても意味がないかというとちょっと違うんだけど、それはまたいつか別のときにね。

 

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